プロスペックスが遅れるようになった
オーバーホールに出したいけれど
正規修理だといくらかかるんだろう…
この質問は、私が時計売場に立っていた頃、修理カウンターで本当によくいただいたものです。
そう迷われるのも、無理はありません。セイコーの公式料金表は、プロスペックス専用ではなく、すべてのムーブメントをまとめた書き方になっています。
ネットで調べても、出どころによって金額がばらばらで、どれを信じればよいか判断しにくいです。
そこでこの記事では、公式の料金表と、修理を受け付けてきた私の実感をはっきり分けてまとめました。

藤原 匠[詳しいProfile]
10万人接客した腕時計販売員
- 関西の百貨店・時計専門店で25年勤務
- ウオッチコーディネーター資格保有
- 専門領域10〜20万円台の腕時計

- 関西の百貨店・時計専門店で25年勤務
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藤原 匠[詳しいProfile]
10万人接客した腕時計販売員
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結論から言うと、正規修理の料金は症状ごとに入り口が決まります。
| 修理の種類 | 公式の料金(税込) | 実際の目安 |
|---|---|---|
| オーバーホール(機械式) | 6,600円〜(全ムーブメント共通の最低目安) | 3万円以上が普通(私の実感・あくまで一般的な目安)。修理会社の例では29,000円〜 |
| バンド交換 | 3,300円〜 | 部品代は別 |
| 外装修理(ガラス・りゅうず) | 3,520円〜 | 部品代は別 |
| ダイバーズの電池交換 | 6,600円 | ― |
※2026年10月31日時点、セイコータイムラボ公式の料金表より。部品代が別にかかることがあります。
ご自分の品番の概算は、公式のオンライン修理受付の見積もりで確かめるのが確実です。
- 症状ごとの修理メニューと料金の目安
- 公式の6,600円〜と、機械式の実際の費用感の違い
- オーバーホールに出す時期と、放置したときのリスク
- 正規修理と修理会社、自分に合う依頼先
修理代がかさむケースや、磨いても傷を消せない素材のことなど、耳の痛い話も隠さずに書いています。
プロスペックス正規修理の料金目安は症状で決まる
結論から言うと、正規修理の料金は「時計のどこに不調が出ているか」で入り口が決まります。
まずは、セイコーの正規修理窓口であるセイコータイムラボの公式料金表をもとに、症状ごとの目安を整理しました。
| 気になる症状 | 修理メニュー | 公式の料金目安(税込) |
|---|---|---|
| 止まる・遅れる・精度が落ちた | 内装修理・オーバーホール | 6,600円〜(最低目安。機械式は3万円以上が普通※) |
| ベルトを替えたい | バンド交換 | 3,300円〜 |
| ガラスやりゅうずが傷んだ | 外装修理 | 3,520円〜 |
| ダイバーズの電池が切れた | 電池交換(100m以上表示) | 6,600円 |
※2026年10月31日時点、セイコータイムラボ公式の料金表より。
いずれも税込の目安で、部品代が別にかかる場合がありますし、料金は予告なく変わることもあるため、正確な金額は公式サイトで必ずご確認ください。
止まりや遅れなど機械の不調ならオーバーホール、ベルトだけならバンド交換。ガラスやりゅうずの傷みなら外装修理、と覚えておくと迷いにくくなります。
機械式のオーバーホール料金は実際いくらか
公式の料金表を見て「思ったより安い」と感じた方もいると思いますが、機械式の場合は少し読み解きが必要です。
公式の6,600円〜は全ムーブメントの最低目安

セイコータイムラボの料金表では、オーバーホールは1行にまとめて書かれています。
対象は「クオーツ・ソーラー・電波・メカニカル」で、料金は「6,600円〜」
つまり、すべてのムーブメントを合わせた最低ラインの目安ということになります。プロスペックス専用の料金表や、モデル・状態ごとの区分は公式には載っていません。
私が店頭で修理を受け付けてきた実感では、機械式のプロスペックスは3万円以上かかるのが普通でした。
「3万円以上」は、あくまで私の経験にもとづく一般的な目安です。時計の状態によっては部品代が別にかかり、総額がさらに上がることもあります。
修理会社のサイトに載る金額との違い
ネットで料金を調べると、修理会社のサイトに、公式の料金表とは別のオーバーホール料金が載っていることがあります。
修理会社の例では、オーバーホールが22,000円〜、29,000円〜と案内されています(29,000円〜は、セイコーにも対応している時計修理工房なんぼやの機械式の参考価格・税込、2026年10月31日時点)。
どちらも「〜」とあるとおり、あくまで最低ラインの金額です。時計の状態や交換する部品などの条件で変わり、部品代が別にかかることもあります。
また、これらはセイコーが公式に出している金額ではありません。会社ごとに作業の範囲も違うため、金額だけを並べて比べるのは避けたほうが安心です。
ネットの金額は「誰が書いているか」を確かめ、公式の料金表と見比べてから判断しましょう。
品番ごとの概算は公式の見積もりで確認
ご自分の時計にいくらかかるかを知る、いちばん確実な方法は公式の見積もりです。
セイコーのオンライン修理受付では、品番と修理したい箇所を選ぶと概算を出せます。
品番は、時計の裏ぶたや保証書で確認できます。
藤原 匠店頭で金額をお伝えしたとき、「何日くらいで直りますか」と聞き返す方は、ほぼ修理に進まれました。逆に「この金額なら新しい時計が買える」と言われたり、黙って「一旦考えます」と返された方は、持ち帰られることが多かった印象です。
記念にいただいた時計や、実際に海で使う時計なら、直して使い続ける価値は十分にあります。まずは見積もりで金額を知り、そのうえで落ち着いて決めてください。
オーバーホールに出す時期と放置のリスク
オーバーホールは、壊れてから直す修理ではなく、壊れないための予防の整備です。
車の車検や、人間ドックに近いものと考えるとわかりやすいと思います。
時計の内部の機械を分解し、洗浄・注油・部品交換をして組み直す作業です。仕上げに精度や防水性能の検査を行い、本来の性能に近づけます。
目安は機械式3〜5年、クオーツ7〜8年

セイコーの取扱説明書では、オーバーホールは2〜3年に1度程度がすすめられています。
これは6R54・4R57・8L35などの取扱説明書で確認できた内容です。モデルによって異なる場合があるため、お持ちのモデルの取扱説明書でご確認ください。
そのうえで、私がお客様にお伝えしてきた目安は、
- 機械式なら、3〜5年に一度
- クオーツなら、7〜8年に一度
海でよく使う方は、防水の要であるパッキンが傷みやすいため、早めを意識すると安心です。
いずれも使い方や環境で変わる、あくまで一般的な目安と考えてください。
クオーツやソーラーも分解掃除が必要な理由
「電池式なら、電池を替えていれば一生使える」と思われている方は、本当に多いです。
ですが、クオーツも実際に針を回しているのは、機械式と同じ複数の歯車です。歯車の油が乾いて汚れがたまると、モーターは無理に針を動かそうとして電気を多く使います。
藤原 匠店頭では「サイドブレーキを引いたまま、アクセルを踏んでいる状態です」とお伝えしていました。
次のような症状があれば、電池ではなく中の油切れを疑ってみてください。
- 新しい電池なのに、秒針が同じ位置でピクピクして進まない
- 時刻合わせのりゅうずが、買った頃より重く引っかかる
- 電池交換から、1年もたたずに止まった
そのまま使い続けると、モーターや回路まで傷み、修理代がさらにかさむおそれがあります。
実際は不調が出てから持ち込む人が大半
正直に言うと、目安どおりに定期的に出される方は、店頭ではごく少数でした。
実際には5〜10年、あるいはそれ以上ノーメンテナンスで使われている方が多かったのが販売員時代の肌感です。
持ち込まれるきっかけは、はっきりした不具合が出たときでした。
藤原 匠「朝巻いたのに夕方には止まる」「1日に数分ずれる」「ガラスの内側が曇る」「日付が切り替わらない」。カウンターで聞いた理由は、だいたいこのどれかでした。
口コミでも、一度もオーバーホールせず7年間毎日使い、完全に動かなくなった例が見られます。その方は、止まる前に1日2分ほどの遅れが出ていたそうです。
お気持ちはよくわかりますが、遅れが出始めた段階で相談するのが、結果的にいちばん安く済みます。
店頭で重症を疑った3つのサイン

25年間店頭に立つなかで、触れただけで「中がかなり傷んでいそうだ」と感じるサインがありました。
- りゅうずで巻くと、ジャリジャリと砂を噛んだような感触がある、異常に重い、または空回りする
- 時刻合わせで針がグラグラする、回す感触が重すぎる、日付が途中で止まる
- 耳元で軽く振ると、ゴトゴト・シャリシャリと何かが擦れる音がする
3つ目の音は、ローター(自動巻きの回転するおもり)の軸がすり減っているときに出やすいものです。
こうしたサインがあると、基本の料金に加えて部品交換の費用がかかる可能性が高くなります。
ベルト交換・ベルト調整の料金と注意点
ベルトまわりは、オーバーホールより気軽に頼める一方で、自己流の失敗が多い部分でもあります。
公式の料金表では、バンド交換は3,300円〜(部品代は別)とされています。交換くらい自分でと考ええる方も多いですが、公式が料金表を入れているということは失敗されることが多いメニューの一つなんです。
ラバーベルトはひび割れ前に交換を
プロスペックスに多いウレタンやシリコンのベルトは、消耗品です。
海水や紫外線、汗の影響で少しずつ硬くなり、やがてひびが入ります。ひびを放っておくと、着けている最中に突然切れ、時計を落としてしまうおそれがあります。
オーバーホールに出すときに、ベルト交換も一緒に頼むと手間がかかりません。
ベルト調整を自分でして高くつくケース

メタルブレスのコマ調整を、ネットの動画を見ながらご自分でされる方もいます。
ただ、セイコーのダイバーズの多くは、ピンと小さなパイプを組み合わせた「ピン&パイプ式」です。専用の工具がないまま作業すると、コマを傷つけたり、小さなパイプをなくしたりしがちです。
店頭で直せず、メーカーでの有償修理をおすすめしたのは、次のような状態でした。
- パイプをなくした、またはコマの中で潰れて取り出せない
- 折れたピンがコマの中に残り、工具でも安全に押し出せない
- 無理な力でコマの穴が広がり、新しいピンでも抜けてしまう
- コマが歪んだり深い傷が入ったりして、コマやブレスごとの交換が必要
藤原 匠「数千円を節約しようとして数万円になるなら、最初からお店に持って来ればよかった」。そう肩を落とされる方を、何度も見てきました。修理に数週間かかると聞いて、さらに驚かれる方も多かったです。
ベルト調整は、時計店に任せるのがいちばん安上がりで安全です。
ガラス・ベゼルなど外装修理の考え方
外装の傷みは、「すぐ直すべきもの」と「味として付き合えるもの」に分かれます。
公式の料金表では、ガラスやりゅうずの交換を含む外装修理は3,520円〜(部品代は別)です。
りゅうずについては、操作のミスで傷めてしまうケースも見られます。私が対応した中には、固くなったねじ込み式りゅうずをペンチなどで無理に回し、ねじ山を潰したとういお客様もいました。
りゅうずの扱いに不安がある方は、プロスペックスの時刻合わせと日付設定のやり方もあわせてご覧ください。
ガラスの欠けやひびは早めに交換する
ガラスの欠けやひび割れは、迷わず早めに交換してください。そこから水が入ると、中の機械まで傷めてしまうおそれがあるからです。
一方で、時刻が見にくくならない程度の細かい線傷なら、急いで替える必要はありません。
次のオーバーホールのときに、あわせて相談するくらいで十分です。
ベゼルの傷と研磨できない素材の注意点
回転ベゼルは、岩場や道具にぶつかりやすく、いちばん傷がつきやすい部分です。
公式でない街の修理会社では、ベゼルの部品だけは手に入らないモデルもあるので、その場合は公式のセイコーラボでの修理一択になります。
もう一つ気をつけたいのが、チタンや表面を硬くする処理がされたモデルです。
ステンレスなら、表面を磨いて傷を目立たなくできます。
一方、硬いコーティングをまとったモデルは、磨くと処理がはがれるおそれがあるため研磨できません。
深い傷を消したい場合は、外装部品ごとの交換になります。
藤原 匠店頭では「日常の小傷にとても強い分、深い傷は削って消せません」と、購入前に必ずお伝えしていました。
傷は、時計と一緒に過ごしてきた証でもあります。
見た目だけの傷なら、道具としての味と考えて付き合っていくのも、プロスペックスらしい楽しみ方です。
正規修理と修理会社、どちらに出すか
依頼先選びで大事なのは、安さだけでなく「その時計をどう使っているか」です。
品質の保証を取るか、価格や納期の柔軟さを取るか、使い方に合わせて選んでください。
| 比べる点 | 正規修理(セイコー) | 修理会社 |
|---|---|---|
| 部品・防水検査 | 純正部品。ダイバーズの防水検査にも対応 | 会社によって異なる(依頼前に確認) |
| 費用 | 公式の最低目安は6,600円〜(機械式の個別料金は公式に記載なし) | 修理会社のサイトでは22,000円〜、29,000円〜の例 |
| 修理期間 | 公式で約2〜4週間 | 修理会社のサイトでは、短めとされる |
| 修理後の保証 | 同じ箇所の同じ故障を対象に1年間(公式) | 会社によって異なる(依頼前に確認) |
| 向く人 | 海やアウトドアで使う人、記念の時計 | 普段使い中心で、費用や納期を相談したい人 |
※修理会社の欄は、修理会社のサイトの記載にもとづく、あくまで一般的な目安です。
正規修理が向く人と修理期間の目安
実際に海やアウトドアで使う方には、純正部品で直り、ダイバーズに必要な防水性能まで確かめてもらえる正規修理をおすすめします。
就職祝いや結納返しなど、思い入れのある時計も正規修理に預けると安心です。
修理期間は、セイコータイムラボで「修理品の到着後、約2〜4週間」となっており、依頼するタイミングの混み具合によって変動します。
時期や時計の状態で変わるため、最新の目安は公式サイトで問い合わせてください。
修理会社が向く人と家電量販店の注意点
オフィスや街中での普段使いが中心なら、信頼できる修理会社も選択肢になります。
修理会社のサイトでは、正規修理より費用を抑えやすく、納期も短めである点が強みとして挙げられています。
選ぶときは、国家資格の時計修理技能士が在籍しているかを一つの目安にするのがよいでしょう。
家電量販店の修理カウンターは受付だけを行う窓口であることが多く、外部の修理会社に送られるため、手数料が上乗せされる場合があります。ダイバーズなど対応が難しい時計は、結局メーカーに回され、時間がかかることもああります。
防水性能と純正部品を大切にしたい方は、メーカーの正規修理へ。
よくある質問(FAQ)
最後に、プロスペックスのオーバーホールについて、よくいただく質問にお答えします。
- セイコー プロスペックスの寿命はどのくらいですか?
-
適切なオーバーホールを続ければ、長く使い続けられる時計です。
ただし、セイコーの取扱説明書では、補修用性能部品の保有期間は通常7年が基準とされています。
長く放置した時計でも、部品があれば直る可能性はあります。一方で、部品がない状態で大事な部品が壊れると、修理できないこともあります。
修理が難しく買い替えを考える場合は、予算別のプロスペックス人気ランキングも参考にしてください。
- 高級時計をオーバーホールしない方がいいですか?
-
いいえ、機械式でもクオーツでも、定期的なオーバーホールをおすすめします。
中の油が切れたまま使うと、部品同士がこすれてすり減り、やがて止まってしまいます。部品交換が増える前に出すほうが、結果的に費用を抑えやすくなります。
- オーバーホールの金額相場はどのくらいですか?
-
セイコータイムラボの公式料金表では、オーバーホールは6,600円〜(クオーツ・ソーラー・電波・機械式)です。
機械式のプロスペックスは、私の実感では3万円以上かかるのが普通で、部品代が別にかかることもあります。
あくまで一般的な目安のため、正確な金額は公式のオンライン修理受付の見積もりでご確認ください。
修理後には、同じ箇所の同じ故障を対象に、1年間の修理保証があります(セイコー公式)。
- グランドセイコーの正規オーバーホール料金はいくらですか?
-
グランドセイコーは、外装の軽い磨きまで含む「コンプリートサービス」として受け付けています。
グランドセイコー公式の目安(税込)は、クオーツが60,500円〜、メカニカルとスプリングドライブが88,000円〜です。
料金は予告なく変わることがあるため、最新の金額は公式サイトでご確認ください。
まとめ
プロスペックスの正規修理の料金は、症状ごとの入り口で考えると整理しやすくなります。
- 止まり・遅れなど機械の不調:内装修理・オーバーホール 6,600円〜
- ベルトを替えたい:バンド交換 3,300円〜
- ガラスやりゅうずの傷み:外装修理 3,520円〜
- 機械式のオーバーホールは、3万円以上かかるのが普通(一般的な目安)
金額はいずれも2026年10月31日時点の公式の目安で、部品代は別にかかることがあります。まずは公式のオンライン修理受付で、ご自分の品番の概算を確かめてみてください。
腕時計は、しまい込むものではなく、一緒に時間を重ねていく相棒です。
きちんと手を入れながら、これからもどんどん使ってあげてください。

